column 社労士コラム

36協定1ヶ月の時間数のカウントについて ~一般条項と特別条項の相違点~

コラム 第62回

2024.05.24

労働基準法では、従業員に対し、1日8時間、1週40時間を超えて働かせてはならないとしています(法定労働時間)。また、休日については、毎週少なくとも1日与えなければならないとしています(法定休日)。この法定労働時間を超え、または法定休日に働かせる場合には、事前に「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を締結し、労働基準監督署に届出する必要があります。
今回は36協定で定める時間外労働・休日労働(本記事では、法定休日の労働を指す)の時間数について確認します。

■ 一般条項と特別条項

36 協定には、一般条項と特別条項があります。法律上、時間外労働の上限は、原則として月 45 時間・年 360 時間となっており(一般条項)、特別な事情がなければ、これを超えることはできません。特別な事情がある場合には、労使で合意のうえ、臨時的に限度時間を超えて労働させることができますが(特別条項)、その際にも、以下を守らなければなりません。

  • 時間外労働 年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計 月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計 2~6か月の平均が全て1月あたり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回が限度

時間外労働と休日労働の合計については、特別条項の有無にかかわらず、「月100時間未満」「2~6か月平均80時間以内」を守らなければなりません。時間外労働が45時間以内に収まり、特別条項にならないとしても、例えば、時間外労働42時間、休日労働58時間だと、合計が月100時間以上になってしまう ので、法律違反になります。

■ 時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)の記載内容についての注意点

36協定届を作成するにあたり、一般条項と特別条項とで、「1ヶ月の時間数のカウント」が異なりますので、注意が必要です。一般条項の場合、1ヶ月の時間数は、時間外労働の時間数のみをカウントすることになっています。これに対し、特別条項では、1ヶ月の時間数は、時間外労働に加え、休日労働の時間数もカウントすることになっているのです。

【例】
一般条項 特別条項
時間外労働 25時間 55時間
休日労働 24時間 32時間
1ヵ月の時間数のカウント 25時間 87時間
↑ 時間外労働のみカウント ↑ 時間外労働+休日労働の合算

実際に、厚生労働省から出されている36協定届の申請様式で、1ヶ月の時間数の記載内容を比較してみましょう。

【一般条項】延長することができる時間数
1箇月
(①については45時間まで、②については42時間まで)
法定労働時間を超える時間数 所定労働時間を超える時間数(任意)
【特別条項】
1箇月
(時間外労働及び休日労働を合算した時間数。100時間未満に限る)
限度時間を超えて労働させることができる回数
(6回以内に限る。)
延長することができる時間数
及び休日労働の時間数
限度時間を超えた労働に係る割増賃金率
法定労働時間を超える時間数と休日労働の時間数を合算した時間数 所定労働時間を超える時間数と休日労働の時間数を合算した時間数(任意)

いかがでしょうか。36協定においては、一般条項と特別条項とで、1ヶ月の時間数のカウントの仕方に相違があることをご理解いただけたかと思います。

最後に、先にも触れましたが、時間外労働と同時に休日労働も命じているときは、一般条項のみを適用しているときでも、時間外労働だけでなく、休日労働の時間数も意識する必要があるので、くれぐれもご注意ください。