column 社労士コラム

今すぐ確認したい転倒災害の現状と防止対策

コラム 第59回

2024.02.01

労働災害における事故の型別では「転倒」が最多であり、令和4年の発生状況では、死傷災害全体に占める割合で4分の1を超えています。そこで、転倒災害の実態と防止対策をとり上げます。

転倒災害の実態

令和4年の発生状況における転倒の性別・ 年齢別の割合をみると、以下のようになっています。

【参考】厚生労働省 令和4年労働災害発生状況の分析等
【参考】厚生労働省 令和4年労働災害発生状況の分析等

50歳以上の女性の割合が約47%を占めており、高齢者雇用が進む中、転倒災害増加に伴い、確実な対策が求められる事項となっています。

転倒によるケガの内容としては、「骨折」が約 70%を占め、転倒災害による平均休業日数(労働者死傷病報告による休業見込日数) は 47日です。また、転倒時の類型では「つまずき」が37.8%、「滑り」が31.8%となっています。そのほか、「歩行中のバランス崩し・もつれ」、「障害物を越えるのを失敗した」、「動作の反動」、「荷物によってバランスを崩した」、「踏み外し」等が挙げられます。

必要となる防止対策

厚生労働省発行のリーフレット 「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう」では、この「つまずき」や「滑り」について、次のように原因ごとに対策を挙げています。

つまづき

原因 対策
何もないところでつまずいて転倒、足がもつれて転倒 転倒や怪我をしにくい身体づくりのための運動プログラム等の導入
作業場・通路に放置された物につまずいて転倒 バックヤード等も含めた整理、整頓(物を置く場所の指定)の徹底
通路等の凹凸につまずいて転倒 敷地内(特に従業員用通路)の凹凸、陥没穴等(ごくわずかなものでも 危険)を確認し、解消
作業場や通路以外の障害物(車止め等)につまずいて転倒 適切な通路の設定
敷地内駐車場の車止めの「見える化」
作業場や通路の設備、什器、家具に足を引っかけて転倒 設備、什器等の角の「見える化」
作業場や通路のコードなどにつまずいて転倒
※引き回した労働者が自らつまずくケースも多い
転倒原因とならないよう、電気コード等の引き回しのルールを設定し、 労働者に遵守を徹底させる

滑り

原因 対策
凍結した通路等で滑って転倒 従業員用通路の除雪・融雪。凍結しやすい箇所には融雪マット等を設置する
作業場や通路にこぼれていた水、洗剤、油等により滑って転倒 水、洗剤、油等がこぼれていることのない状態を維持する。
(清掃中エリアの立入禁止、清掃後乾いた状態を確認してからの開放の徹底)
水場(食品加工場等)で滑って転倒 滑りにくい履き物の使用(労働安全衛生規則第558条)
防滑床材・防滑グレーチング等の導入、摩耗している場合は再施工
隣接エリアまで濡れないよう処置
雨で濡れた通路等で滑って転倒 雨天時に滑りやすい敷地内の場所を確認し、防滑処置等の対策を行う

職場のチェックリスト

上記の他、転倒事故防止のためには、以下のような項目についてチェックを行い、できていない項目については対策を行う必要があります。

  • □ 通路、階段、出口に物を放置していないか
  • □ 安全に移動できるように十分な明るさが確保されているか
  • □ 転倒を予防するための教育を行っているか
  • □ 作業靴は、作業に適したものを選んでいるか
  • □ ヒヤリハット情報を活用して、転倒しやすい場所の危険マップを作成し従業員に周知しているか

統計データを見ると、特に、50歳以上の女性の転倒災害発生件数は、高い割合を占めています。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」 では、 労働災害統計や労働災害・ヒヤリハット事例集をはじめ、転倒・腰痛防止用視聴覚教材など、職場の安全衛生教育に活用できる教材が掲載されてます。これらを活用して、転倒を防止するための教育を行うことで、労働者が安全に働ける職場環境をつくっていきましょう。