column 社労士コラム

賞与を支給する際の社会保険に関する留意点

コラム 第58回

2024.01.09

社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)は毎月支給する給与のほかに、賞与原則、年3 回以下の支給に限る を支給したときにもかかります。そこで改めて賞与を支給する場合の社会保険料の計算や届出に関する留意点について確認します。

賞与の支給と社会保険料

毎月支給する給与は、支給額に基づき標準報酬月額が決定・改定され、この標準報酬月額に基づいて従業員や会社が負担する社会保険料が決定されます。

賞与に関しては、支給する賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を乗じて、その都度、社会保険料が決定されます。標準賞与額には上限があり、健康保険・介護保険は年間累計額573万円 毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額 、厚生年金保険は支給1ヶ月あたり150万円が上限となります。なお、同月内に賞与が2回以上支給されるときは合算した額が厚生年金保険の上限となります。

転勤や転職等、年度の途中で被保険者資格の取得・喪失があった場合、標準報酬額の累計は、保険者単位 協会けんぽ・健康保険組合等で行うこととされています。したがって、同一の年度内で、複数の被保険者期間がある場合については、同一の保険者である期間に決定された標準賞与額を累計することとなります。

育休中の従業員への支給

育児休業中の社会保険料は、会社が手続きをすることで、その徴収が免除されることとなっています。免除の対象となるのは、育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間の、毎月の社会保険料です。

ただし、賞与にかかる社会保険料は、育児休業の期間が1ヶ月を超えるときにのみ免除となります。免除の対象は、末日が育児休業である月に支給される賞与の社会保険料です。

なお、育児休業等による保険料免除期間に支払われた賞与についても、「賞与支払届」を提出しなければなりません。そして、この場合において決定された標準賞与額も年度の累計額に含まれます。

賞与支払届の提出

賞与を支給したときには、支給日から5日以内に賞与支払届を日本年金機構に届け出する必要があります。「賞与支払届」の対象となる賞与は、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものです。(なお、年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象とされます。また、労働の対償とみなされない結婚祝金等は対象外です。)

この届出内容に基づき、社会保険料が計算されるとともに、将来受け取る年金額の計算の基礎となります。日本年金機構に賞与支払予定月を登録している会社では、被保険者の氏名や生年月日等が記載された届出用紙または電子媒体が、原則として賞与支給予定月の前月に届くことになっています。なお、登録している賞与支払予定月に賞与を支給しなかったときには「賞与不支給報告書」の提出が必要です。


退職等により社会保険の資格を喪失する日が属する月に支給する賞与には、社会保険料がかかりません。ただし、資格を取得した月と同じ月に資格喪失をした場合で、資格取得日から資格喪失日の前日までに支払われたものであれば、社会保険料がかかることになっています。

なお、 健康保険では、 社会保険の資格を喪失する日が属する月に支給した賞与でも、資格喪失日の前日までに支払われた賞与については、標準賞与額として決定し、年間累計額に含めることになっているため、該当する従業員がいるときには、 賞与額等の記入漏れがないように注意が必要です。