column 社労士コラム

2024年4月から変わる就業場所・業務の変更の範囲の明示ルール

コラム 第57回

2023.12.01

労働契約の締結の際や有期労働契約の更新のタイミングごとに、すべての労働者に対し労働条件を明示する必要があります。明示事項である「就業場所」と「業務の内容」は、現在は雇入れ直後のものを明示すれば足りるとされていますが、2024 年4 月1 日以降は、これらに加えて「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要です。

記載方法

今回追加となる「就業場所・業務の変更の範囲」とは、雇入れ後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の範囲のことを指します。そのため、将来の可能性も含めたうえで、その範囲を明示することになりますが、就業場所・業務がどの程度限定されるかによって、記載方法が変わります。記載例は以下のとおりです。

就業場所・業務に限定がない場合

雇入れ直後 変更の範囲
就業場所 〇〇営業所 会社の定める営業所
従事すべき業務 〇〇に関する業務 会社の定める業務

就業場所・業務に限定がない場合

雇入れ直後 変更の範囲
就業場所 〇〇営業所 ◇◇県内の営業所
従事すべき業務 〇〇企画業務 本社における〇〇または△△の企画業務

就業場所・業務の変更が想定されない場合

雇入れ直後 変更の範囲
就業場所 〇〇営業所 〇〇営業所
従事すべき業務 〇〇企画業務 〇〇企画業務

いわゆる総合職については、通常、「就業場所・業務に限定がない場合」に該当するかと思いますが、「会社の定める営業所」および「会社の定める業務」と記載するほか、変更の範囲を一覧表として添付することも考えられます。また、在籍出向を命じることがあって、出向先での就業場所や業務が、出向元の変更の範囲を超える場合には、その旨も明示するようにしましょう。後になってトラブルとならないように、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明らかにし、会社と従業員とで共通認識を持つことが求められます。

適用等のタイミングについて

今回の改正は、2024年4月1日以降に締結される労働契約から適用されます。そのため、2024年4月1日以降に入社する従業員について、2024年3月31日以前に労働条件を明示する場合には、改正前のルールが適用され、新たなルールでの明示は不要です。なお、従業員の理解を深めるために、2024年3月31日以前から新たなルールで明示することは望ましい取組みとされています。早めにどのように記載する必要があるのかを確認し、労働条件通知書のひな形を直しておきましょう。

また、求人情報や募集要項においても、前述のような労働条件を明示しなければなりません。ただし、求人広告のスペースが足りない等、やむを得ない場合には、労働条件の一部を別のタイミングで明示することも可能です。その際、原則として、面接等で求職者と最初に接触するまでに、すべての労働条件を明示する必要がありますので、注意してください。その他、面接を進めていく過程で、当初明示した労働条件が変更となる場合にも、その変更内容を速やかに求職者に明示する必要があります。

なお、今回の変更に伴って厚生労働省から出されたモデル労働条件通知書には、「就業規則を確認できる場所や方法」の欄が追加されました。これは労働基準法施行規則の改正に基づくものではなく、行政通達の改正に基づくものであり、就業規則を備え付けている場所を示すことで、従業員が容易に就業規則を確認できる状態にしたいということが背景にあります。就業規則は全従業員に周知させなければならないものですので、是非活用しましょう。